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昭和史1:帝銀事件② [史]

前記事(帝銀事件①)の続きです。

捜査の目は事件時の立ち居振る舞いや、毒薬の飲ませ方等専門知識をもった医療関係者、研究者、そして軍関係に向いていたはずなのに、テンペラ画家の平沢貞通を連行。

なぜ毒薬の知識もない、画家の平沢貞通氏が逮捕されたのか?








警察のある捜査班は証拠品である『松井蔚』の名刺を捜査。
名刺を作成した所がたまたま“蔚”という文字がなく、“くさかんむり”に“尉”という文字を重ねて文字を作った為、他の“松井”の文字より大きくなっている特殊な名刺である事が判明。松井蔚は実在の人物であった。松井蔚氏はきっちりした性格の人で、名刺交換した人を手帳に記していたので、交換した人物をそれぞれ調べ、残枚数、交換した人の名刺の有無も確認。その時に一時平沢貞通の名前が捜査線上に挙がったが、平沢貞道は松井蔚と名刺交換をしたが三河島で財布ごと掏られているとの事。三河島で確認した所、紛失届けが出ており、一度平沢の名は捜査線上より消える。
この事件で、日本で初めてのモンタージュ写真を作成したらしい。この写真が、平沢貞通に似ていたので、名刺を確認した警察側が話をうまく持って行き、平沢の写真を撮影。生き残りの証人に平沢の写真を見せるが、ほとんどが「似ていない」と証言。(人間の記憶力はあいまいなので、あまり期待はしていなかった)
しかし、平沢氏は今迄金に困っていたはずなのに、帝銀事件の直後、妻に8万円を渡し、預金用に4万5千円、その直後に実家の北海道に行った旅費などを合計すると、帝銀事件で盗られた金額と近くなる金を持っていた。
当然アリバイは調べられる。アリバイの証言者が数人おり、証言内容の時間の記憶があいまいで、時間の確定まではできなかった。(というか、平沢の年齢からだと、時間的に事件に関わるには無理がある)
が、平沢は連行されてしまった。

平沢は病気というか、薬の副作用がもたらすある症状があった。
脳疾患のコルサコフ症候群。これは狂犬病の予防接種の副作用らしく、その場限りのすぐばれるような嘘(虚言癖)や、記憶障害、判断力の低下がある。平沢はコルサコフの症状より回復後、性格が変わり、欺瞞虚言、空想性虚言の症状を現していた。
この時代はまだ、物的証拠がなくとも自白があれば起訴が出来ていた。その頃丁度新憲法で人権蹂躙問題がかなり問題にもなっていたが、以前の流れで、平沢の自白により起訴。
起訴はされたが、平沢の言葉には嘘が多すぎた。精神鑑定書によると平沢の性格の特徴の1つに誇張性(実際以上になんでも大きく話す)があるため、どこまでが本当でどこまでが嘘なのかがわからず、検事達をてこずらせた。
そしてコルサコフ症候群が原因なのか、元々の素質なのかはわからないが、平沢は過去に銀行での詐欺事件を起こしていた。未遂も含め4件。この詐欺事件に関して平沢はあっさり認め、『私は悪い人間です』と泣き出す。確認の為、被害者に面通しもするが、『九分九厘間違いなし』との返答。そうなるとそれまで帝銀事件に関してはシロだと思っていた人まで、クロではないかと考えてしまう。
その上、平沢は金の出所をはっきり言わなかったらしい。この時代、贅沢品である絵画は売れにくく、有名な画家であっても生活に困っているのが普通の時代。平沢自身も文展に審査なしで出展できるほどだったらしいが、生活には困っていた様子。平沢も生活の為に春画を描いて売ったのではないかと言われていたが、画家のプライドからか、預金封鎖中だった時に隠し金で買ってくれた買主をかばう為か詳細はわからずじまいだった。
確かに平沢にとって不利な条件は揃っていた。

しかし、捜査の目は第731部隊に向いていたはずでは?

(まだ続きます)

参考


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