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横溝正史■犬神家の一族●2 [書]

横溝正史■犬神家の一族●2
●2021.06.08

2021.06.06■横溝正史■犬神家の一族●1.jpg


前回は登場人物、遺言状、家系図でした。続きは事件に入ります。
今日の記事は長いです。

●事件1
犬神佐兵衛が亡くなってから8カ月程経った10月18日、金田一耕助が古館法律事務所の若林豊一郎の依頼を受け那須湖畔の那須ホテルに到着した日。一カ月ほど前、若林より「犬神佐兵衛伝」という本と手紙が届いた。内容は、近く犬神家に血みどろな事件が勃発しそうで憂慮している。幾人もの犠牲者がでるのではないか、現在すでに起こりつつあり、大惨事に発展する恐れがあるので未然に防ぐ為調査願いたい。との事。耕助はホテルの湖畔に面した縁側に椅子を持ち出し手紙と本を読み返していた。
一艘のボートが湖面に漕ぎ出したので、犬神家の人かと女中に聞くと、犬神家の主筋の珠世との事。女中曰く綺麗な方とのことなので、耕助は双眼鏡を珠世にピントを合わせ見ていると、突如ボート上で何か起こった様子。溺れるかと思い耕助は慌ててホテル専用のボートを漕ぎ出した。犬神家の水門からも男が沖を確認し湖面に飛び込み泳ぎ出した。結局この男が一番先に珠世の所に到着し、耕助が二人をボートに上げた。話を聞くとボートに穴が開いており詰め物をしていた。詰め物が取れたためこのような事態になったようだ。
助けた顔が猿にそっくりな男が、これで3度目だと言っていたので、耕助は内容を聞いた。1度目は夜具の中に蝮がいた。2度目は自動車のブレーキがきかないようにしていた。

●事件2
ボート事件からホテルに戻ると待ち合わせをしていた若林が到着していた。
座敷に戻ると灰皿に煙草の煙と見慣れぬ帽子が脱ぎ捨ててあったので、耕助は待っていたが、一向に戻らない為女中が探しに出ると女中の悲鳴が聞こえたので洗面所に駆け付けると、男がうつぶせに倒れていた。確認するとその男が若林だった。解剖の結果、死因は毒物だが、胃の腑からは検出されず、肺臓から発見された。要するに毒を飲んだのではなく、吸ったという。吸引ということなので、煙草の吸い殻を調べ混入されていたことがわかったが、毒物が混入されていたのは、その吸い殻1本だけだった。という事は犯人は目算でいつでもよいから、若林が死にさえすればよい。このやり方は、悠長なように見えて、犯人にとって必ずしもターゲットの人物のそばにいる必要がないので、アリバイもできる。
翌日耕助のもとに古館恭三が訪ねてきた。古館曰く、犬神家の遺言状が読まれた気配がある。遺言状を入れた金庫は若林も開けることが出来る。犬神家の人間があの金庫を開ける事は出来ないので、もしかすると若林が誰かに買収されたのではないかと心配になった。
耕助は遺言状の内容を知ることは出来なかったが、古館弁護士が珠世のボートでの事件を聞いてきたので、珠世が遺言状の大立て物だという事だけは知りえた。

●佐清
昭和2×年11月1日。佐清は南方より復員はしていたが、東京に滞在したまま、博多まで迎えに行った松子と共に中々那須市の本邸に戻らなかったが、やっとこの日那須市に戻ってくると町中の噂。犬神家への行きがけに耕助のもとに寄った古館弁護士より、佐清は母の松子と共に前日の夜遅く帰宅したが、真っ黒な頭巾をかぶっており、疲れているとそのまま部屋に籠ってしまったと教えてくれた。

●遺言状開示
古館弁護士は犬神家での発表後耕助のもとにもう一度立ち寄ると約束をし、犬神家に向かった。
しかし発表前に耕助は古館に呼ばれ犬神家へ赴くことになった。
開示前、佐清が頭巾をかぶったままなのが問題となり、松子の命により、頭巾を取り中の以前の佐清にそっくりなゴム製のマスクの顔を見せた。佐清は顔に大怪我をしているのでマスクを作っていた為戻るのが遅くなった事を皆に伝えた。そしてマスクをめくり顔の一部を見せる。
崩れた顔の衝撃で一同が何も口を挟めない状態で遺言状は発表された。

●青沼菊乃・静馬
遺言状公表後耕助は古館弁護士に「犬神佐兵衛伝」に記載されていない青沼親子の事を問いただす。元は犬神製糸工場の女工で松子より若い。菊乃の妊娠がわかると、松・竹・梅の娘3人はもし生まれる子が男の子の場合、佐兵衛は全財産を譲りそうだと恐慌をきたす。そして、菊乃を苛める。菊乃はこのままだといびり殺されそうだと思い逃げた。が後に佐兵衛が菊乃に斧、琴、菊の家宝(犬神家の相続権)を与えている事が発覚。そして男の子静馬を出産。松・竹・梅の3人は菊乃の元に行き、「自分の産んだ子は佐兵衛のタネではない」と一札
いれさせ、3種の家宝を取り上げる。

●手型
耕助は古館弁護士に誘われ佐武、佐智と共に那須神社に向かう。那須神社の大山神主より、連絡が有った。戦争に出る前、武運長久の祈りの為それぞれの手型を奉納していたのだ。佐武、佐智の二人はマスクの佐清が本物かどうか疑いを持っているので、これで本物かどうか証明できる。しかし松子は手型を押す事を頑なに拒む。
松子が拒んだ理由は、佐武がまるで罪人の様な切り出し方をした為、依怙地になり拒んだ。もしくは、松子はマスクの男が佐清でないと知っていて拒んだ。どちらかは不明

●事件3
古館弁護士より犬神家で事件が起こったので、すぐ来て欲しいと連絡が有った。到着後外庭を抜け内庭に入った耕助はまず見事な菊畑を目にした。珠世の使用人の猿蔵が菊作りの名人で、菊人形を作っている。その菊人形の顔は犬神家の人々の顔に似させている。順繰りに見ていくと笠原淡海は佐武だったが、よくみると総髪の四方髪ではなく現代人の様な左分けになっている。見ると似させているのではなく、佐武本人の生首だった。
その後犯行現場は犬神家のボートハウスの上が展望台になっており、そこに夥しい血溜まりと倒れた籐椅子がみつかった。しかし、胴体の方はそこにもなかった。
その展望台に菊花のブローチが落ちており、持ち主は珠世だったので、珠世から話を聞くことになった。
珠世曰く昨晩この展望台で佐武と会った。理由は、珠世は自分が持っている佐兵衛よりもらった懐中時計の修理をマスクの佐清に依頼したが断られた。しかし懐中時計の裏蓋に拇の指紋がくっきり入っていた。(どうも珠世はマスクの佐清に疑いを持っておりわざと指紋をとった様だ)それを佐武に伝え手型と照合できると伝え、渡す為だった。しかし、帰り際佐武に乱暴をはたらかれ、猿蔵に助けられ、逃げた。その時の佐武は口汚く罵っていた。というのが珠世の供述だった。

●佐清の手型
佐武の事件があり、松子・佐清親子が、依怙地になっている場合ではないので、みんなの前で佐清の手型を押すことになった。

●謎の復員者
手型の照合を待っている間、下那須の旅籠屋・柏屋の主人より頑なに顔を見せない復員者が宿泊し、急いで出発したが部屋を掃除した時に「復員援護、博多友愛会」と染めた血に染まった手ぬぐいがあった。と宿帳に記した山田三平と記した名前と住所を持ってきた。柏屋は少し前に見つかった血溜まりのあったボートがみつかった場所から5分もかからない程の距離。
耕助は、この血に染まった手ぬぐいは目につくようにわざと置いて行ったと判断した。
耕助と署長は松子・佐清のもとを訪ね、手拭いと住所を見せた。佐清が復員時に貰った手拭いには「復員援護 博多同胞会」と染めていた。しかし住所は松子の東京の邸の住所だという。

●手型の照合結果
藤崎鑑識員の報告は神社に奉納されている手形と先程のマスクの主の出型は同一という報告だった。
しかし、珠世は何かを言いかけたが、口をつぐんだ。
そして松子夫人も不可解な動揺が一瞬だけ面上に表した。

●珠世と佐智
珠世は猿蔵に内緒でボートに乗り湖面に出ていた。そこにモーター・ボートに乗った佐智が来た。佐智曰く「金田一と署長が重大な話があるから急いで集まってくれ」との事。急ぐのでこのモーター・ボートに乗れ。と。そして珠世は自分のボートを湖面に残し乗り移った途端、佐智に濡れたハンカチを鼻孔にあてられ、意識を失った。
佐智は、珠世の意識のないのを確認すると、屋敷には戻らず西に向かい、豊畑村の佐兵衛が建てた、今はもう荒れた一番最初の本邸、現在の空屋敷へ珠世を連れ込んだ。佐智は屋敷に泥靴跡をみつけるが、最近警察が復員者の捜索にこの屋敷に入ったことを思い出した。そして珠世の衣類をはいでいくとき、物音がした。確かめに佐智が部屋を出て探すが、わからず部屋に戻ると、珠世の体に上着が掛かっている。そしてドアが開くと戦闘帽を目深にかぶりマフラーで顔を隠した復員姿の男が立っていた。
そして猿蔵のもとに珠世の居場所と今の状態を知らせ、迎えに行くようにと不思議な電話があった。
珠世は無事助けられ屋敷で翌日覚醒した。
屋敷が騒がしくなっていた。昨晩より佐智が行方不明だと。その事について猿蔵に問いただしていた。
猿蔵曰く不思議な電話の後珠世を助けに行ったが、そこに椅子に縛られた佐智が居たが、腹が立ったので頬をはたきそのまま佐智を置いて佐智のモーター・ボートで犬神家の邸に戻った。
そして猿蔵の案内で空屋敷に佐智の捜索に出掛けた。佐智は上半身裸のまま椅子に縛り付けられ、猿轡もはめられたままの姿だった。父親の幸吉が猿轡を外したが、首に琴の糸が巻き付きこと切れていた。
耕助はひとつ疑問があった。佐智は強く椅子に縛り付けられていたが、上半身には多くの擦り傷があった。擦り傷が出来るには、綱が相当緩んでいないとつかないはずだと。

●斧・琴・菊
佐武が菊人形に生首を飾られ、佐智が首に琴の糸が巻き付けられていた事を知り、犬神家の相続権を表す斧・琴・菊を連想させたのは言うまでもなく、特に松・竹・梅の三姉妹が異常な反応を示したため、理由を聞く事となった。松・竹・梅が佐兵衛の寵愛を受けていた青沼菊乃を苛めた事、そして、菊乃が三姉妹の去り際に言い放った「・・・斧・琴・菊がお前たちの身に報いてくるのじゃ・・・」

●青沼菊乃・静馬の消息
警察は青沼菊乃の消息を調べたが、富山に逃げ、そこで静馬を手放し結婚をしたが、その後の消息はわからなかった。静馬は津田家に養子に行き、その後何度か戦地に赴いている事だけが知りえた。

●犬神佐兵衛の秘密
那須神社の大山神主から爆弾発言が投げ込まれた。那須神社に残っていた唐櫃に大弐と佐兵衛の書簡があったが、調べていると、大弐と佐兵衛の関係は2~3年で終わり、その後佐兵衛は大弐の若い妻・晴世と不倫関係にあり、晴世の産んだ子・祝子は佐兵衛の胤だった。祝子の娘・珠世は佐兵衛の実の孫だった。
佐兵衛は晴世と心中を図る程の関係だったが、佐兵衛自身が事業が成功していくに従い自分の子を産みながら自分の妻に慣れない晴世を憐れんでいた。会う事はできないが3人の側室を持った佐兵衛が3人の側室に情がうつらないように自分で恐れ、警戒していた。

●最後の犠牲者・佐清
12月13日、耕助は一連の事件を最初から見直していた。その時橘署長より連絡が有り、犬神家3人目の犠牲者が出た。湖面の裏側を見てくれという。耕助が確認すると胴から上が氷に突っ込まれ、真っ逆さまに足だけが突っ立ていた。死体を引き上げ確認すると、顔の崩れた佐清だった。次は“斧”かと思ったが、予想に反して頭部に斧のキズはなかった。解剖して死因を調べる為死体を移動するとき、珠世より死体の右手の指紋を取るように注進があった。

●斧(ヨキ)の謎
佐清の遺体には斧(ヨキ)の謎が隠されていた。“スケキヨ”が逆さまになっており“ヨキスケ”、上半身(スケ)が水没していたので“ヨキ”すなわち、ヨキ=斧 だと。

●青沼菊乃その後
午後9時過ぎに「青沼菊乃」を名乗る女性の訪問を受けた。現れたのは、松子の事の師匠宮川香琴だった。宮川香琴は病気の為面相が変わっていた。
菊乃は富山で琴の師匠の宮川松風と関係を持ったが籍は入れていなかった。が琴の弟子が宮川師匠と呼ぶのでそのまま通していた。静馬とは、静馬の出征前に会い、過去の出来事も全て話していた。しかし、復員したとの連絡は受けていないとの事だった。そして、静馬と佐清は顔がそっくりだったことも認めた。松子の琴の師匠になった理由は断れない事情があったのと、顔が変わっているので、好奇心も手伝って師匠になった。

●死体の指紋
珠世の注進により取った死体の指紋は、先日照合した指紋とは違っていた。
という事はこの死体は佐清ではない。


とここ迄にします。
ここから先は、犯人がわかる内容になっているからです。
ここ迄頑張って書いても、やはり最後の犯人は読んで知って欲しい。
まぁ、あまりに有名な話なので、原作を読んでいない人でも犯人だけは知っている人もあると思いますが、推理小説が好きな私には、犯人は書けません。



犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

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  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1972/06/12
  • メディア: 文庫







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