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京極夏彦■巷説百物語 帷子辻 [書]

京極夏彦■巷説百物語 帷子辻
●2021.11.26

中々進まない“巷説百物語”シリーズのまとめですが、全部は無理そうなので抜粋しています。
今日はこの『巷説百物語』の表装の裏にある“九相詩絵巻”に関連する話です。

京極夏彦■巷説百物語 帷子辻●角川書店.jpg


まず九相詩絵巻ってなんやねん?って思いますよね。
Wiki→ 九相図(くそうず、九想図)とは、屋外にうち捨てられた死体が朽ちていく経過を九段階にわけて描いた仏教絵画である。 名前の通り、死体の変遷を九の場面にわけて描くもので、死後まもないものに始まり、次第に腐っていき血や肉と化し、獣や鳥に食い荒らされ、九つ目にはばらばらの白骨ないし埋葬された様子が描かれる。九つの死体図の前に、生前の姿を加えて十の場面を描くものもある。九相図の場面は作品ごとに異なり、九相観を説いている経典でも一定ではない。

京極夏彦■巷説百物語 表装裏●角川書店.jpg


この表装の裏の絵巻は個人蔵の物と記載されていました。内容は物語でわかりやすく説明もあります。
写真はわざとはっきりわからないように廊下で太陽光で透けさせて撮影しました。この図を養老孟司さんが紹介していたそうで、それを紹介していた
http://www2u.biglobe.ne.jp/~itou/deki/dekixx/acontentX28.htm

●帷子辻(かたびらがつじ)
京洛の西に帷子辻と呼ばれる辻がある。
東に太秦、北は広沢、北東は愛宕常盤、西に嵯峨化野。
真実か虚構かはわからないが、その昔、嵯峨帝のお妃橘の嘉智子・檀林皇后がお隠れになる前に、死して後我が亡骸は、弔いもせず埋めもせず、辻にうち捨て野に晒せと言い遺された。その意志は唯一つ、無常の二文字を体現せしめるためなりということ。
万物は縷縷変化して止まることなく、人生も人体もただ虚しきもの、永遠なるものなど何もなしと、世に知らしめるためであった――というのである。
生ある時の皇后は類なき麗人で、恋に惑いて仏心を忘れたる愚か者も世の無常を感得し成仏の方便となるであろうとの信心深きお心の現れと伝えられている。その腐る様、朽ちて行く様、消ゆる様、禽獣に喰わるる様は、色に惑い香に迷うた輩どもを多く導き救った。
そのご尊骸を捨てたるが帷子辻だというのである。
ただ、ご尊骸が朽ちたるその後も―――。
如何なることか、この帷子辻に折節に女の死骸が忽然と現れ、犬鳥に食まれるさまが見える事があったという。
辻が無常を覚えたか。無常が辻に衍った(はびこった)か。

嵐山の端、訪れる者すらいない破れ御堂の板の間の上に、白帷子に行者包みの御行の又市と、剃髪し、墨染めの法衣を纏ってはいるが、凡そ真っ当な僧侶ではない、鬼でも飲み込んだような不敵な面構えの無動寺の玉泉坊という小悪党が一巻の絵巻物を覗き込んでいた。
有り難い絵やがな――玉泉坊は言った
「これは靄船の野郎に頼まれて、さる有名な門跡に頭下げて、大枚叩いて借りてきたもんやさかいな、汚さんといてくれまへんか」
又市は顔を顰めた。絵巻には女が描かれている。しかしその女が生きているのは最初の一図だけである。
俗に九相詩絵巻、小野小町壮衰絵巻などと呼ばれるものである。
要するに死後の人体が土灰に帰す迄の九つの相を描いた絵巻物なのである。
これが有難ぇのかいと又市は問うた。
玉泉坊は「こりゃ世の無常を説いておるのんや」
情け知らずのほうやない、常ならむの方だと。
「世の中てぇのは移り変わるモンやっちゅうことを表す絵ェだ。こないな飾り立てた綺麗なおなごも、死ねば腐る。膨れて、蛆が湧いて、犬に喰われて骨になる訳や。時が経てば美も醜に転ずる。美醜は同じモノなんや。変わらんと美しいモノなんぞない、色は移ろうものやから、そないな果敢なげなものに心を囚われるんは愚かや、とそういう絵やな」
「この手の絵はな、九相図いうてな、九相詩いう古い漢詩があるんやが、それを絵にしたもんなんや。・・・・紅粉の翠黛(すいたい)ただ白波を綵る(いろどる)のみ、男女の淫楽互いに臭骸を抱くっちゅうやつやな。ええか人は死ねば九つの相を示す。その最初の絵は生前の相や」
次にその横の、筵に寝かされ、白帷子を掛けられた女の図を示した
「これが死んですぐやな。新死の相や。まあ死んでる訳やから顔色は悪いわ。病で死んだもんなら生前から衰えるやろうしな。――これやと寝てるのと変わらんやろ」
「――恩愛の昔の朋は留まりて尚あり、飛揚の夕魂(せきこん)、去って何処にかゆく、という訳や。生前の面影があるよって、こりゃ中々見切れぬわい、そうやろ」
未練や執着やと入道は言った。更にその横の絵を示した。
腫れあがり、皮膚も毒色(ぶすいろ)に変色している。顔相も様変わりしており六腑爛壊して棺槨(かんかく)に余ると、まあこうなる訳やな」「好いて焦がれて慕った相手でも、こうなったら終いやろ」と玉泉坊。次の相は肌の色は益々黒くなり、皮のあちこちが破れ始めている。眼球も流れ出している。見苦しい事この上ない。
「骨砕け筋壊れて北郡に在り、色相変異して思量し難し。腐皮悉く解く青黛の貌、膿血忽ち流る爛壊の腸—――っちゅう訳や。人は高潔なもんかもしれへんけど人の躰ゆうのは不浄なもんやさかいな、この相に至ってもその不浄が顔をだしよる。続いてこれが肪乱の相や—――」
「白蠕身中に多く蠢蠢たり、青蠅(しょうじょう)は肉(ししむら)の上に幾許か営営たり―――もう汚らわしいだけのものやな。風が臭気を二里三里も運びよる。不浄そのものといった体や。しかしな、こりゃ人にとっては穢らわしいだけのものやがな、禽獣にとっては格好の餌やで―――」
玉泉坊は隠れていた絵をさらした。
狗などの獣や鳥、鷹などが骸に群がり、腐乱した屍体を貪り喰っている図である。
「噉食(たんしょく)の相いいますねん。飢犬吠嘷(きけんべいこう)貪烏群衆すということですわ。餌やな。人の尊厳もかけらもありまへんわ。でもな、犬をあさまし思うたらあきまへんな。これが犬にとっては当然のことですねん。・・・」
更に絵巻を捲った。
「ほれ、これは青瘀(せいお)の相やな。絵巻によってはこれが先に来ることもおますが、この絵巻はこの順や。見てみ。もう顔は髑髏や。肉ももう殆どないわな。残った皮も空しいもんやで。この後はもう、骨しかあらへん―――」
入道は巻物を最後まであける。
「これは骨散の相や。しゃりこうべやで。皮張っててこそ男女の差はあるがな、こうなってしもうては男も女も況してや別嬪も醜女もおもへんわ。で最後は古墳の相や。骨も散ってしもうてもう塵芥やで。五蘊は元より皆空しかるべし、何によって平生この身を愛すや。・・・」

●生前の相
●新死の相
●肪脹の相
●血塗の相
●肪乱の相
●噉食(たんしょく)の相
●青瘀(せいお)の相
●骨散の相
●古墳の相
玉泉坊による関西弁での九相図の説明です。関西弁に関してはネイティブ大阪人の私に喋らせるともっとクセのある物言いになりそうですけど。

玉泉坊は又市が何か様子が変だと感じ、引っ掛かりがる様なら聞かせろと。
又市は何年も前に会った女の話をした。
江戸で会った婆ァの話だった。
色狂いで男なしでは一夜もいられない女。老いさらばえても斑に白粉塗りたくって、皹割れた唇に紅を引いて、夜な夜な男の袖を引いていた。夢を見ていた。てめえは若くて綺麗だという夢を。又市は現実を見せた。そして、女は首縊って死んだ。それが肪脹の相のように浮腫んで、涎垂らして。又市は
「無理に揺さぶって、水かけて頬叩いて、目ェ醒まさせたっていいこたねぇ。この世はみんな嘘っぱちだ。その嘘を真実と思い込むからどこかで壊れるのよ。かといって、目ェ醒まして本物の真実見ちまえば、辛くって生きちゃ行けねぇ。人は弱いぜ。だからよ嘘を嘘と承知で生きる、それしか道はねえんだよ。・・・・」
そこでこざっぱりした身なりの靄船の林蔵と花の載った箕を頭に載せた女が立っていた。

靄船の林蔵は表向きは帳屋を生業とする小悪党である。
河内木綿を烏袖に折り、黒の掛け襟、三巾の前掛けに御所染めの細帯—――。都の花売り—――白川女の装束の横川のお竜を二年程前くらいから組んでいる身内と紹介した。

儲け話ではないが、礼金は出る仕事の話をした。本来なら林蔵の仕事だが、手に余る上、林蔵は明日から他の仕事で長崎に行くので、代わりだった。戻ってからでは遅いらしい。
去年の夏、太秦の先の帷子辻に女の腐乱死体が突如出現した。死後十日や二十日ではなく、目玉は抜け腸は溶け、髪の毛ばかりが雀の巣みたいに、まるで血塗の相のように。往来に腐る迄放置されたのではなく、死骸は腐った状態で捨てられていた。林蔵は語った。
一年前の夏—――。
帷子辻に腐乱した女性の屍体が投棄された。
屍体の状態は著しく悪く、顔相も体格も判ったものではなかったが、衣服などから判断するに低い身分の女でないことは慥かだったそうである。貧しい身なりの遺体だと不審な点があろうと行き倒れで済まされるが、武家の妻女の出で立ちであったため京都所司代、奉行所も放っておく訳には行かなかったそうである。
身元は程なく、京都町奉行所与力、笹山玄蕃の妻女さと、が骸の姓名だった。
さとは事件の二月程前に行方がわからなくなり探索が続けられていた。
事情があった。
さとは拐された訳ではない。殺害された訳でもない。
さとは二月程前に流行病で他界していた。拐されたのは生きたさとではなく、さとの屍体だった。
荼毘に付される前に煙の様に掻き消えてしまった。そんな折の出来事だった。
与力笹山玄蕃は変わり果てた骸に縋って只管に泣いたという。
その年の暮れ、再び帷子辻に女の骸が捨てられたのである。
矢張り死後二月以上経っていようという腐乱死体であった。
やがて――櫛や根付などの持ち物から、祇園の杵の字家の志づのなる芸妓のなれの果てであった。
志づのは二月半前から生きたまま行方がわからなくなっていた。が周囲は、身請けされて何処か余所に行ったもの――と誰もが思っていた。失踪の直前に置き屋の方に志づの名義でまとまった金子が届いていた。しかし志づのの遺体は姿を消した日そのままの格好だったらしい。死因は扼殺と思われた。志づのの場合はすぐに殺害され一定期間隠され腐敗を待って捨てられた。
そして春。三度帷子辻にかた骸が横たわった。
三つ目の骸は一層損傷が激しく、顔面などは半ば白骨化していた。身許は守り袋から、東山の料理渡世由岐屋下女、とくであった。死因は矢張り扼殺のようであった。
そして―――
「一昨日、また―――ですねん」
又市は絵巻を示した。
「最初の奥方が血塗、次の芸妓が肪乱、それで下女が青瘀の相だったんだろ。段々酷くなる。ここまできちゃァ後は犬に喰われるか骨になるだけじゃねぇか。その辻に—――骨でも散らばっていやがったか」
林蔵は
「そうやない。今回はな、まだマシやな。見つかったのは白川女――花売りやな。花売りのお絹というてな、ええ娘やった。真面目でな、世話好きで。なあ――お竜」
「・・・お絹は確かに死後数日どこかに隠され、いきなり帷子辻に捨てられた。捨てられはしたがな、お絹は殺された訳やないのんや」
お絹は自害や。—――林蔵は言った。
「—――首ィ吊ったんは間違いない。梅の木ィにぶる下がってんのを何人も見ておるんやから。慌てて降ろそとしてな、巧く行かへんさかい応援呼びに行って、その隙に消えたんや。辻に置き去りにされた時もな、縄がそのままついておったよって」
又市は
「・・・・いったい何を助けりゃいいんだ。真逆下手人捜せというんじゃねぇだろうな」
「そうやない。下手人は大方見当ついてんねん」

帷子辻の怪異は連日続いた。
夕刻・・・・それは忽然と現れた。
筵の上に横たわった女の死骸である。
死骸であることは一目でわかった。青黒く浮腫み、蠅が群がり蛆が生き、時には臓腑を犬が啖っていたからである。
しかし通報を受けた役人が駆けつけると既に骸は消えている。多くの物が見ている。調べてみても痕跡もない。
翌日も同じようなことが起きた。
矢張り同様な刻限、同様の目撃者が出て、役人が駆けつけると消えていた。
一計を案じ五日目には奉行所の同心数名が張り込むことになった。
しかし―――
慥かに死体は現れたのだ。ほんの一瞬、張っていた全員が目を逸らした隙に―――それは現れた。
聞いた通り蠅が集蝟って(たかって)いる。臭気も物凄い。
その付近にはただ門付けの托鉢僧が居るばかりであり、その僧は骸が現れる前からそこにいたのだった。念のため問い質したが埒もなかった。

「その坊主が儂や」玉泉坊はそう言った。
考え物の百介が帷子辻までの道すがら玉泉坊より鞍馬や叡山、蓮台野、化野、それぞれの様子や供養の事を聞いていた。
「つまり――無常の地である小倉山方面への入口でもある帷子辻なら、そうした幻覚が湧き出るのは寧ろ当然だと――そう仰りたいのですね」
百介は幽霊話だと思い大阪からやってきていたが、又市たちの仕掛けだった。
玉泉坊は小悪党の顔に戻って言う。
「ひゅうどろなんて芝居だけのもんやで。あんさんかて国中歩いて本物に遭うたことないんでっしゃろ?そんなもんあらへん。でもな、あってもええ。あって欲しいというのが人情でっしゃろが。こないな古い町に住んでおりますとな—――そういう気ィになって来る。特に帷子辻辺りは余計そうや。せやから又さんの仕掛けも不自然にならんかったんやないかと、儂なんかはこう思いますわ。もしや本物やないかと思うこともある」
「本物の――幽霊ですか」
お竜が化けておるだけやけどな―――と、入道は言った。
「あれはな、儂かて驚くわ。あれ、わざと腐汁を顔に塗って蠅を呼び蛆を這わせ、獣の腐肉を肚に仕込んで犬に喰わせてな。徹底してますやろ。大体出るのは逢魔刻やし、傍に寄ればまあ危ないとこですけどな、気持ち悪うて誰も近づきはせんのや」
今では、暮六つ過ぎれば犬の仔一匹いない。
「人が誰も来なくなっても—――続けているのですか」
「ただこの下手人は一筋縄で行く相手とちゃうような気もしますのや」
百介は遺族に対する嫌がらせと感じた。遺族を苦しめる以外の意味はないように。
玉泉坊によると奥方の死骸盗まれた笹山という与力は、人格高潔にして清廉潔白、情に篤く不正を憎むちゅう、今の世の中然然いない役人だそうだ。なので―――嫉妬、追い落としの線か?
その与力、今では愛しい愛しい奥方に先立たれ、参っていた。焼くのも埋めるのも我慢が出来ない程に。ようやく葬る決心した矢先、盗まれ、野晒しにされた。もう廃人同様だそうだ。ほとぼりが冷めた頃に思い出すような事件が起きる。もし嫌がらせとしたら大成功だ。
しかし亡くなった奥方が所司代のお偉いさんの娘だった。舅が――最愛の伴侶の亡骸を辱められた苦悩、余人には計り知れず、その心中を慮るに憐憫の情抑え難し—――休職扱いとなっている。
そんな甘い処遇でも他の者も文句が出ないのは人徳のようで、寧ろ周囲から同情を買っている。それに二人目以降は何の関係もない女だ。
「本当に関係ないのですか」と百介
志づのという芸妓は地味な女であったらしく、地道に稼ぐ質で杵の字家でも浮いた存在で、身請けの話は誰も信じなかった程で青天の霹靂だった。相当の金子は届いたようだが、相手は不明だった。
次に殺された下女は由岐屋という料理屋で侍もよく行く店で、与力同心も行っていたが、下女までは・・。
最後の白川女に到っては首吊っている。花売り仲間の話では死ぬような理由はなかった。いずれにしても堅物の与力とは結び付かない。

辻は―――淡昏かった。
そこ既に、生者の住まう場所ではなかった。
むうと気が凝った。
そして――そこに。
骸が現れた。
それはどう見ても遺体としか見えなかった。勿論、ぴくりとも動かなかった。臭気も酷かった。誰もが目を覆い、鼻口を抑えて立ち去るであろう。酷い有様である。
四半刻、そのまま転がっていた。そして、人とあやかしの区別もつかぬ、逢魔刻が訪れる。
人影が注した。
酔漢の如く、左に揺れ、右に傾き乍ら骸に近寄っていき、骸のの傍らに到って止まった。侍は詫びているのか、腰が抜けたのかのように土下座でもするように顔を下げた。
侍は息を吸っていた。胸一杯に。
侍は嗚咽を漏らし始めた。しかしそれは悲しみの声ではない。悦んでいる。
—――お絹、どんなに崩れようと、腐ろうと、拙者は—――。
りん。鈴が鳴った。
又市は言った
「今宵はお絹が迷うて出ました。旦那様も――罪なお方じゃ」
侍は顔を骸の帷子に擦り付ける。
そして、お絹は身分が違う、情けを受けるは有り難いが、玩ばれるのは真っ平御免と申したと。
又市は
「絹は上古(いにしえ)の檀林皇后宛らに――身を以て知らしめたのでござりまするな」
侍は腐汁を啜り
「――拙者の気持ちは真実じゃ。仮令どんな姿になろうとも、変わるものではないのだ。・・・・」
「・・・諸相は無常というも理。色即是空と誦える(となえる)もまた理。凡て空なりというたところで、凡ては空という理自体は不変のものだ。ならば、ならば同じく、情愛思慕の念もまた――不変のものではあるまいか—――」
侍も最初は疑った。妻への思いを疑い、試したのだった。
「試した。自分が惚れておるのは何なのか。好いているのはどこなのか。拙者は確かめたかったのだ。立ち居振る舞いに惚れておるのなら、命消えたところで断ち消えよう。上辺外見に惚れておったなら――朽ちれば立ち切れよう。魂に囚われておるのなら、中庸を過ぎれば気も収まろう。だが――」
「いつまで待ってもまるで衰えなんだ。拙者は—拙者の気持ちは本物なのだ。拙者は真実妻を愛しく想うておったのじゃ」
御行はすうと鈴を翳した。
「仮令醜く腐り果てても、仮令骨となり散らばろうとも、変わらぬ想いこそ本物だ。生者も死者も関係ない。拙者の想いは本物なのだ。純粋なる、真実の気持ちなのだ。それが証拠に、拙者は三度繰り返し、四度目もまた—――」
又市は
「勝手でござります」
「絆なんてモノは生者の中にだけあるもの。死者にゃそんなモノ御座居ません」
「死人はモノでやす。だから腐る。骸は塵芥や糞と変わりのねぇ、不浄なモノに過ぎねぇんせ御座居ますよ。美醜の違いも男女の違いも、些細なことで御座りましょう。しかし」
「黄泉津比良坂の話では、伊邪那岐神は黄泉津醜女、黄泉軍、八柱の雷神を躱しなって逃げ帰られ、冥界への道――黄泉津比良坂を千引の石を以て引き塞えたという、神世のお話に御座ります。・・・」
又市は侍に何故伊邪那岐神は逃げ帰ったのか聞いた。侍は真実の想いがなかったと言い、拙者は違うと。しかし御行は
「浅はかなり」愚かなり、愚かなりと。屍体はモノだ。人に魂はないと嗤った。
「況してや冥界などというものはない」
一方的な妄執は女達も堪らないと。が、厭う必要もない。と。伊邪那岐神は醜い妻が嫌で逃げ帰ったのではない。追われて逃げたと。醜い姿を見られた伊邪那美神が怒ったからだと。
「見るなと言うたのに、見たからで御座います」
「…死して後、きちんと送り届けなければ礼儀知らず。死者にも尊厳がございます。旦那様、見られたくない姿を見られて悦ぶ者はおりませぬぞ。己が醜く腐って行くことが、一番嫌な死者自身。その恥ずかしき己の様を一番見られたくない相手こそ、心底好いた—――お前様であった筈」
嘘と思うなら尋けと。
腐った女は白目を剥いて、爛れた唇を悸かせた(わななかせた)。
「吾に辱見せつ」
侍は骸の傍らで腹を切って果てた。


ここから先は種明かしなので、本を買って読んでください。
まぁ、amazonも楽天も中々リンクが貼れないように、持っている方が手放さないようで、手には入りにくいようですが、探すのも楽しみの一つですね。
私は備忘録でこれを書いているので、続きはしっかり読みました。
京極堂シリーズと同じで、不思議な事はないという一貫した姿勢です。
不思議な話は読むのが好きですが、ついつい原因を考えてしまいますね。何か物音がしたら、怖いくせに原因を確かめずにはいられない性分なので。(おかげで就寝時は音楽をかけて寝る)
そうそう先日面白い物をみつけました。「怪と幽」の裏表紙に荒俣宏さんの自伝の広告があり、購入しました。どういう風に育ったのか興味津々です。今中学時代迄読んでいますが、脱線しまくりで、超~面白いです。荒俣さんも“不思議はない”人ですので、安心して読んでいます。


amazonや楽天のリンクは貼り付けようとしても在庫がないようなので、ジュンク堂のリンク貼り付けますね。

■巷説百物語(角川文庫)→https://honto.jp/netstore/pd-book_02336178.html




妖怪少年の日々 アラマタ自伝

妖怪少年の日々 アラマタ自伝

  • 作者: 荒俣 宏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/01/29
  • メディア: 単行本







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京極夏彦■巷説百物語 芝右衛門狸 [書]

京極夏彦■巷説百物語 芝右衛門狸
●2021.09.12

今日は長いです。
もっと短くまとめても良かったのですが、自分の備忘録というか、頭に叩き込むという目的(『了巷説百物語』に向けて)もあるので、長くなってしまった。ネタバレなので、今から読もうと言う方は、パスして下さい。

京極夏彦■巷説百物語 芝右衛門狸●角川書店.jpg


登場人物
●御行の又市
●山猫廻しのおぎん
●事触れの治平
●山岡百介


■芝右衛門狸
淡路でのお話。
芝右衛門という名の好々爺が居た。家は代々農家で豪農ではなかったが、暮らしは豊かだった。
芝右衛門は謹厳実直で働きづめに働いて年老いた。しかし老境の芝右衛門は悔いてはいなかった。
芝右衛門は人柄も温厚で読み書きも達者だったので慕う人も多かった。
隠居してからは日がな一日茶を啜り、句をひねって過ごした。
芝右衛門には子が五人、孫が十人居た。
村外れに人形浄瑠璃の小屋掛けがあった日家族総出でそれを見に行った。惣領の弥助の孫“てい”が芝居の最中に憚りに行くと言って座を抜けた切り、姿を消してしまった。
村の衆総出で夜っぴで探したが見つからず、拐しじゃ、神隠しじゃとなった。
“てい”の骸が朝方芝居小屋の裏手でみつかった。頭が真正面から切り下され、唐竹割りに割られていた。
普段笑顔を絶やさぬ芝右衛門も泣き、萎れた。
吟味の結果、近頃上方で評判の辻斬りだろうということで落ち着いた。
その頃今日から大阪にかけて残忍非道な辻斬りが横行していた。
-遺恨なく金品も取らず、身分や男女をの差を問わず、ただ夜陰に紛れ、行き合った者の息の根が止まる迄斬る―ただ殺す
-所謂通りもの-
芝右衛門は考え抜き、畏れ乍らと、役人に、「これが辻斬りの仕業とは思えぬ。もう一度お調べを詮議してもらえないか」と申し出た。
役人は「芝右衛門、その方の申し出は真に以て尤も至極。我らとて左様に思わぬ訳ではない。ただよく考えよ芝右衛門。もしも下手人が上方より流れ来た辻斬りでなかったなら、その時はその方の住まうこの村の、村の衆の中に下手人が居るという事になるのだぞ-」
浄瑠璃の見物客、演者、皆顔見知りである。疑う余地はなかった。下手人はその中には居らぬ。
否-居てはならぬのだ。ならば辻斬りだろうが、魔物だろうがお役人に任せる以外ない。
そして騒ぎは鎮静化した。
ひと月、ふた月経つうちに村はそれなりに秩序を取り戻した。
秋、満月だった。
芝右衛門は皎皎と照らす太陰に見蕩れていた。
凝乎っと芝右衛門を注視るものがある。暗がりに煌りと二つの眼が光った。
それは―一匹の狸であった。
芝右衛門は暫し待てと言って、厨房へと赴き残り飯を鉢へ移し、庭に戻るとその狸は行儀よく庭に鎮座していた。
狸は鉢の中を平らげて、礼でもするように二度三度首を振り夜陰に消えた。芝衛門は獣の消えた闇に向け、儂の言葉がわかるなら明晩再び来るが良いと言った。
その翌日、狸は居た。再び飯をふるまった。四五日続いた。七日目の晩、翌日昼に来たら尾頭付きを進ぜようと言った。午の刻に狸は来た。家人を呼び集め狸を見せて、わが友と告げた。狸は芝右衛門の家に迎えられ、可愛がられ、座敷に上げて話し相手にもした。
村の者はあの芝殿もどうにかなったのか?と芝右衛門の正気を疑った。
芝右衛門は狸に、村の者はお前様が人語を解すという事を信じていない、もしお前様に芸があるのであれば、人にでも化けて来てはくれんか。と。
翌丸一日狸は姿を見せなかった。いつまでたっても狸が来ないので障子を閉めようとした時、視線を感じた。そして低木の下から影がせり出した。
大黒頭巾を被り、戎色の袖なしに筒袴をはいた身なりの良い老人が立っていた。
「手前は堂ノ浦に住む芝右衛門と申します」昨晩所望があったのでこのような姿で参上したと。
芝右衛門はどうした訳か実に愉快な気持ちになり狸の言葉を信じた。

話は変わって人形芝居の市村松之輔の屋敷。
秋口に怪異が起きた。
人形庫から啜り泣きが聞こえてきたとか―――。
娘の人形が一人で歩いていたとか―――。
頭同士が語り合っていたとか―――。
その手の話で松之輔は動じる事はない。松之輔の憂鬱は別のところにあった。
松之輔の杞憂は人形ではなく人であった。その人物は屋敷の離れ座敷に坐す(おわす)さるお方であった。
今年の春、城代から呼び出しがあった。淡州支配の稲田九郎兵衛とお目見えが叶うなり、人払いがされ、内密の頼み事を引き受けてくれとのことであった。何度も念を押され問われたが、洲本城代蜂須賀家家老職直々の申し付けである。松之輔に断れるわけはない。
暫く客人を与って貰いたいのだ―――。
そして少なからぬ支度金と厳重に封をした書状が渡された。
ふた月後、稲田の指示通り丹波の興業の後、化野で客人を迎えた。
共侍三名を従えた、頬当頭巾で顔を隠した立派な身なりの若侍であった。
丸顔の酷く倦み疲れた初老の武士(藤左衛門)が一歩前に出て深々と礼をした。武士に頭を下げられる、礼を尽くされるなど一度もなかったので松之輔は戸惑ったのを覚えている。何も問わぬ約束であったが、何とお呼びすればよいかそれだけ問うた。
「殿と呼べ―――。」と若侍が言った。
悪い予感がした。その若侍が発する酷く厭な気配を敏感に感じ取った。
例年夏場は淡路中を巡回するのだが、若侍が同行する旅は人目を忍ぶ為深夜となり旅の行程は遅れたので、道すがら一箇所だけ小屋掛けすることにした。がそこで騒ぎが起きた。
興業中に村の娘が神隠しにあった。
その日も若侍は荒れており、三人の従者も閉口していた。翌日役人が入ってきたが、役人たちは侍達の姿を見ても訝しむこともせず、寧ろどこか納得の行ったような顔になり、ただ一礼して去った。
屋敷に戻り、離れの座敷を宛てがった。ひと月ほどは静かなものだった。
やがて離れから罵声が響くようになった。そして夏の終わりごろ従者の一人が死んだ。運び出された従者の死体は、額を割られ、胸も腹も縦横に斬られ、彼の若侍に手打ちにされたのは一目瞭然であった。
松之輔は血で汚れた離れを清めたが、人が住んでいたとは思えなかった。獣の塒、猛禽類の巣のようだった。
二人目の従者の姿が消えた後より怪異が起き始めた。
右目の上を腫らせた藤左衛門が松之輔の部屋を訪れたのは怪異が始まって五日目だった。
藤左衛門は松之輔に、殿は人斬りの病だと。そして殿の寝所に夜な夜な現れる物の怪、殿曰く狸、の事を話した。藤左衛門は隣の板間で寝ている、物の怪が現れている間藤左衛門は意識が遠のいているので、直接見ていない。ただ不可解なのは、物の怪は語るのみだと。昨夜は浄瑠璃の人形の頭を置いていった。その人形の顔面はまるで西瓜の如く真っ二つに割られていた。そして藤左衛門は自分は意識が遠のいているので物の怪の姿を見れないので、松之輔に見張りを頼んだ。
殿の夕餉の後の風呂の間に松之輔は離れに忍び込んだ。そして殿の部屋の隅に無造作に置かれた長持ちの蓋を細く開くように木片を挟み、中で夜を待った。窶れきった殿が床に伏した。
虫の声が聞こえた。
りん、と音がした。
松之輔は身構える。
障子がぼうと丸く、薄明かりが点った。
「長二郎」低い声がした。
松之輔の総身の毛穴が開いた。
物の怪は巡礼の様な白装束で跫を立てずに這入って来た。頭は行者包み、首からは偈箱を下げ、手には鈴を持っている。
物の怪は侍の顳顬(こめかみ)を押さえつけた。
「さあ――いい加減に本性を顕わすが良い。裏切り者の長二郎よ。この六右衛門とあの金長とどちらにつくと申したか。この場で返答するが良いぞ―――」
「黙れ卑怯者。おい長二郎狸。・・・・・」
「よ―余は――たぬきなどではない。よ、余は、ま、まつだい―――」
「己は畜生だ。獣だ。幾ら人を気取っても始まらぬ。浅ましきけだものだ。けだものにそのような、偉そうな姓などないのだ。己はな、ただの狸の長二郎よ。それが証拠に――ほうら思い出すが良い。京都の三条、筆問屋の娘を斬り殺した夜のこと――」
「おおおおお—――」
長二郎は雄叫びを上げて身を起こし、狂ったように立ち上がると、ぐるぐると躰を回して叫んだ。
りん。鈴が鳴った。
侍は放心し両膝を落とした。

芝右衛門の孫娘ていが殺された時の吟味役だった勘兵衛が芝右衛門宅を望む松林の中に居た。
勘兵衛は洲本城城代稲田より、噂の芝右衛門狸の真偽の見極めを申し付かっていた。そしてただ呆然と眺めていた。いきなり見慣れぬ風体の若い男に声を掛けられた。
「私は江戸は京橋に住まう山岡百介と申します・・・」
若い男はあれは贋物だと思います。ときっぱり言った。
そこで老人に犬を嗾(けしか)けてみようと思うと。
「あの老人が狸ならもうどうすることも出来ますまい。直様狸の姿に立ち戻り、姿を晦ますことでしょう。もしもそれが出来ない時は―――犬に喉笛を噛み切られ、死して後に獣の本性を曝しましょう」
若者が犬を連れて戻ると去った後、勘兵衛だけが取り残され、芝右衛門の目に留まり、座敷に上げられ歓待を受け、芝右衛門狸の挨拶を受けた。
勘兵衛は人にしか見えなかったが、この爺が這入って来た途端、部屋が腥(なまぐさ)くなった。
芝右衛門狸は三十六年前の阿波の金長六右衛門の狸合戦の事を話し始めた。
この時の勝敗を決する要因となった、残忍非道で知られる猛々しい長二郎の話になった。
長二郎は六右衛門の援軍を快諾していたが、狸同士の争いで命を落とすなど真っ平御免と合戦の直前にとんずらをきめ、煙の如く消えてしまった。ほとぼりが冷めるまで人間に化けて身を隠しただろうと。
長二郎は六右衛門の仕返しが怖く三十年もの間只管人に化け続けたが、遂に本性を顕わした。人様を殺め始めた。
お察しの通り、京大阪を渡り歩き、罪なき人を惨殺した辻斬りこそが長二郎だと。六右衛門は征伐に、そして五日後の洲本の端の人形芝居がかかるので、そこで凡ての決着をつけると。
庭の方でいきなり轣轆と車を引く音がした。荷車の横には百介が立っていた。箱の中から獰猛な赤犬が二匹が物凄い勢いで飛び出し芝右衛門狸に飛び掛かった。「お助けを、お助け—――」と叫びながら二匹の獰猛な犬と垣根の向こうに転がっていった。
地面には大きな狸が死んでいた。

五日後の松之輔一座の人形浄瑠璃が演じられている時に事件が起きた。
数匹の犬に喰らい付かれ、物狂いの様になった、殿・あの若侍が桟敷に乱入してきた。場内は混乱を極め事態が収拾するまでかなりの時間を要した。犬は逃げ、侍は頓死した。
洲本城城代稲田九郎兵衛は卒倒しそうになった。離れでは藤左衛門は腹かっ捌いて息絶えていた。
松之輔は物の怪が最後に言ったことを思い出した。
――十日後・・・己は犬に食い殺されるものと知れ
その日が丁度十日目であることを。
松之輔は稲田に知ることの凡てを話した。
間を置かず勘兵衛と百姓の芝右衛門が稲田の許を訪れ、本日の惨劇は芝右衛門宅に訪れ狸によって予め知らされていたと。稲田は頭を抱え説明はつかない、理解するには
侍が狸である―――という結論である。
その上で侍の遺体を自ら検分した。遺体は人の姿のままだった。
藩主蜂須賀公が立ち上がり
「阿波は狸の本場であるとか―――・・・・ひと月晒し、それでも骸が人のままなら、その時改めて詮議を致すがよかろう」と。
十日経っても半月経っても――骸は人のままだった。が――二十五日目に――。
骸は忽然と狸の姿を現した。
そして事件は漸く公になった。
神無月某日、淡州洲本に於て徳州公浄瑠璃観覧の折、上方に於て人斬りを為したる長二郎と名乗る若侍、乱心の上上桟敷に飛び入り乱暴狼藉を働き、猛犬に噛み殺されしが、その骸、死して廿五日後もって狸の姿に変じ、衆人大いに驚く。彼の長二郎なる若侍、狸の変化し贋物なれば―――
本物はいずこに居らんや―――



さすがにいつものように一日で書き上げは無理でした。
仕事に行っている日は書いていなかったので、書き始めてから、他の本を4冊読んでしまった。
その中には京極夏彦の新刊『「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし』も読んでおり、この記事を中断して、河鍋暁斎の記事にしようかと思ってしまった。
河鍋暁斎は葛飾北斎、歌川国芳と並んで興味のある絵師で、数冊の画集と図録(行き損ねた暁斎展の)を持ってる程だったのですが、京極さんの講演の中で暁斎の話があったのでついつい・・・。暁斎の記事はまた後日。



ところで、ワクチン接種しました?私は8月の末日に1回目接種しました。免疫力が高い方なので(炎症をおこすと、白血球がすぐ高くなる体質)いつもなら予防接種は受けないのですが、今回はさすがに受ける事にしました。来週2回目です。副反応あるのかな?連休は取っているのですけどね。まぁ、その日は予約している坂本龍一の「MINAMATA」のサントラが届くと思うので、熱出している場合じゃないので、根性ででも聴くつもりです。










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京極夏彦■巷説百物語 小豆洗い [書]

京極夏彦■巷説百物語 小豆洗い
●2021.08.12

京極夏彦■巷説百物語●角川書店.jpg


先月「遠巷説百物語」を読んだ後、久し振りに“巷説百物語”シリーズを最初から読み直していました。最初のこの「巷説百物語」が平成11年(1999年)に発行されています。なので読んだのが20年以上前になるので、こりゃ~忘れているなと思い、「了(おわりの)巷説百物語」を読むまでにしっかり頭に入れなおそうと、それに向けての読み直しです。私の読書は1回目は勢いで読み、2回目でもう一度細かい所をチェック、そしてもう一度改めて読み直す。まぁ1回目で気に入らないとそこまで読みませんが。このシリーズに関しては“重い”というリスクがあったので、読み返しをしていなかった。今回は頭に入れ込みたいという思いで鞄が重くなるのを覚悟で読んでいました。取り敢えず通しで「西巷説百物語」迄勢い読みました。明日からもう一度「遠巷説百物語」です。
頭に入れ込むなら、書くのもいいかと思いました。
1作目は20年以上前だしいいかな?

京極夏彦■巷説百物語 小豆洗い●角川書店.jpg



■小豆洗い
登場人物
●御行の又市
●山猫廻しのおぎん
●事触れの治平(備中屋徳右衛門)

激しい雨の中の山の中の小屋での話です。
僧の円海が寺への帰り道激しい雨と遭遇し難渋している所に御行姿の男(又市)より「この先の橋は流されてしまった。この下の山小屋で雨をやり過ごした方が良い」と声を掛けられた。悩んだ末円海は山を下り山小屋へなだれ込むように勢いよく山小屋の扉を開けた。そこには、先程の御行姿の男の他十人程の男女が雨宿りをしていた。夜をやり過ごす為、江戸で流行りの百物語をすることとなった。
山猫廻し(傀儡師)が10年程前の話を語り始めた。自慢の姉様“りく”の話だった。姉様は隣の郷のお大尽の息子与左衛門への嫁入りが決まっていた。婚礼の前日姉様と山へ行った。途中、休もうと思い姉様は大きな石の上に座っていた。不吉な予感がし姉様を見ると硬直していた。視線の先に山猫がいた。怖くなり、動けなくなってしまい、随分と長い間そうしていた。刻が過ぎ、気が付けば姉様は倒れていた。
翌日の婚礼の日、姉様は綺麗だった。が一寸目を離したすきに、消えてしまった。真ん中の主役の花嫁が誰一人と気付かずに消えた。そして大騒ぎになり、山狩りにまでなった。姉様は居た。祝言の前日出掛けた山の中腹の大きな石の上に座っていた。そして担ぐようにして連れ戻された。が、また消えた。また石の上に居た。十日ほど経った頃おぎんは夜中姉様のもとに行き、どうしたのか聞いた。姉様は言い交した男がいると。おぎんは両親に注進し、縁組は破談になった。しかし探せど姉様と言い交した男はみつからなかった。結局両親は、石の上に小屋掛けをし、朝晩食事を持って行ったが、結局食べずに姉様は餓死してしまった。
同じ小屋にいた諸国の怪異譚を聞き集めている山岡百介は、なぜか坊主の円海が何かに引っ掛かっているようだと感じた。そのとき
しょき。
微かな音がした。円海が怯気りとした。御行が外を見て米を磨ぐような、米というより、籾殻、小豆を磨ぐような音がしたと言った。そこから、小豆磨ぎ婆だ、小豆洗いの話になった。
そこで初老の商人・徳右衛門は小豆洗いは恨みを残して死んだ小僧がしょりしょり小豆を磨ぐのだと。手前は小豆洗いの雇い主だったと言った。そして徳右衛門の語りが始まった。
徳右衛門は五十を過ぎても子がなく五年前に番頭を養子に迎え、隠居した。
その頃の番頭は“辰五郎”といった。辰五郎はよく働く、懸命に仕事をする。それなのに丸切り信用せず手前の身代をかっ浚う気だと思ってしまった。
そして“弥助”という新米の小僧を可愛がった。弥助は十三くらいだったが、少々足りない小僧で、五つか六つ位の純朴な子供だった。そういう子供だったので身代を狙う事もない。そして側に置いた。
奉公人は得心できなかった。懸命に働いても見向きもされなかったのだから、意見もされた。意見をする奴は怪しいと悉く馘にしてしまった。奉公人は半分になった。
弥助には変わった特技があった。升に一杯小豆を盛ると見ただけで何粒かぴたりと当てる。殿様の前で座興し、褒美ももらい、いずれ弥助に跡目を譲ると言ってしまった。そしてお祝いとなって殿様の前で量った小豆を弥助が磨いで来ると言ってそのまま弥助は消えてしまった。そして大川端から骸が揚がった。
その夜から鬼魅の悪い唄が聞こえるようになった。弥助の声だった。パラパラっと音がした。軒下に赤小豆が。
小豆磨ごうか―――。
人獲って喰おうか―――。
しょりしょり―――。
小さな小僧が小豆をばら撒き、そして井戸に消えた。
翌朝井戸を調べたら、弥助の持ち物と赤小豆が見つかった。
弥助は小豆を持ったまま石で打ち殺され、その後井戸に放り込まれた。
下手人は辰五郎だった。辰五郎は死罪になった。
手前の強欲のせいで働き者の番頭と小僧を死なせてしまい、目が覚めた。二番番頭に身代を譲り、諸国を巡りふたりの菩提を弔っていると。まだまだ成仏できないようで、行く先々で小豆を磨ぐ音が聞こえるんでございます。と。
いきなり大声を上げて円海が立ち上がった。その場に居た全員が肝を潰した。
意味不明の言葉を喚き散らし衣を振り回したので、蝋燭の灯が消え真っ暗になった。
「おのれ、貴様たちは何者だ、何の企みだ」
「そうじゃ拙僧じゃ、この儂じゃ」
円海は怒鳴った後、慟哭し声を上げ暴れ、やがて静かになった。


ここ迄が又市一味の仕込み。
この続きは本作を読んでください。

この本には後
●白蔵主
●舞首
●芝右衛門狸
●塩の長司
●柳女
●帷子辻
が掲載されています。
本当はこの「小豆洗い」をもっと簡単にまとめ他の作品もまとめるつもりだったのですが、ついついダラダラ書いてしまいました。
沢山あるので今後続きを全てかけるだろうか?





残念、文庫の中古しかありませんでした。
なので気が向いたら、続きを書くかもしれません。


今日は沢山雨が降りました。
V6の新作を
雨→https://youtu.be/vnZ9uN6uQPw


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京極夏彦■遠巷説百物語 [書]

京極夏彦■遠巷説百物語
●2021.07.14

7月2日に発売されました。

京極夏彦■遠巷説百物語●角川書店.jpg


“巷説百物語”シリーズ、“遠(とおく)”です。
発売日の2日は私の勤めている店のセール初日に当たっていた。買いに行けるか?と心配していたのですが、前日のセール準備の日(前日なので準備はしているので忙しいが、店自体は暇)に近くのフロアのジュンク堂の在庫検索してみたら入荷していたので、休憩中に買いに行きました。その時読んでいる途中の本があったので、すぐ読むわけではないのに、発売日に買いに行きたいファン心理です。
恒例の厚さ計測

京極夏彦■遠巷説百物語●角川書店-2.jpg


4.5㎝なので、普通サイズって所ですね。
セール期間中は休みが少なかったので疲れが中々取れていないのに、早く読みたい一心で重いのに鞄に入れて通勤し、読み終えています。
読み終えて本棚に収納したのですが、シリーズを収納している場所の空きスペースがわずかになってしまった。

京極夏彦■巷説百物語シリーズ●1.jpg


これはマズい。『了(おわりの)巷説百物語』の連載が始まっているのに・・・。
“了”が発売されたら、シリーズ収納場所は引っ越ししないと。
もうどうせなら“了”おわりの後に“付(おまけの)”や“横(となりの)”、“外(はずれの)”とか出してくれたらいいのになぁ。
京極夏彦さん、お願いします~。

発売されてすぐなので、まだ内容は書く予定はないです。

最初の『巷説百物語』が発売されたのが1999年なのでもう22年です。長期間楽しませて頂いています。
そういや昔wowowで“怪”としてドラマ化されていました。
又市役の田辺誠一さんがカッコ良かった。後印象に残っているのは「赤面ゑびす」の本田博太郎さん。かなり強烈に憶えています。おぎん役は遠山景織子さん、夏八木勲さんも印象深い。京極夏彦さんも登場していました。他京極さんの周りに人達、大沢在昌さん、宮部みゆきさん、水木しげるさん、荒俣宏さんも夫婦で出演していました。

録画しているのですが、VHSのビデオテープなんですわ。DVD出ているかな?と思って検索したら、BOXで出ているけど、高額になっている・・・。中古で買おうかな。
先日より廃棄家電で出そうかと悩んでいるテレビがある。姉が出戻ってきた時、“テレビデオ”を持って来ている。ブラウン管なのでかなりのスペースを取っている。あれ、まだビデオは見れるのかな?今度試してみます。


現在節約継続中なので、『巷説百物語』最初から読み返しています。


遠巷説百物語 「巷説百物語」シリーズ (角川書店単行本)

遠巷説百物語 「巷説百物語」シリーズ (角川書店単行本)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/07/02
  • メディア: Kindle版







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横溝正史■犬神家の一族●2 [書]

横溝正史■犬神家の一族●2
●2021.06.08

2021.06.06■横溝正史■犬神家の一族●1.jpg


前回は登場人物、遺言状、家系図でした。続きは事件に入ります。
今日の記事は長いです。

●事件1
犬神佐兵衛が亡くなってから8カ月程経った10月18日、金田一耕助が古館法律事務所の若林豊一郎の依頼を受け那須湖畔の那須ホテルに到着した日。一カ月ほど前、若林より「犬神佐兵衛伝」という本と手紙が届いた。内容は、近く犬神家に血みどろな事件が勃発しそうで憂慮している。幾人もの犠牲者がでるのではないか、現在すでに起こりつつあり、大惨事に発展する恐れがあるので未然に防ぐ為調査願いたい。との事。耕助はホテルの湖畔に面した縁側に椅子を持ち出し手紙と本を読み返していた。
一艘のボートが湖面に漕ぎ出したので、犬神家の人かと女中に聞くと、犬神家の主筋の珠世との事。女中曰く綺麗な方とのことなので、耕助は双眼鏡を珠世にピントを合わせ見ていると、突如ボート上で何か起こった様子。溺れるかと思い耕助は慌ててホテル専用のボートを漕ぎ出した。犬神家の水門からも男が沖を確認し湖面に飛び込み泳ぎ出した。結局この男が一番先に珠世の所に到着し、耕助が二人をボートに上げた。話を聞くとボートに穴が開いており詰め物をしていた。詰め物が取れたためこのような事態になったようだ。
助けた顔が猿にそっくりな男が、これで3度目だと言っていたので、耕助は内容を聞いた。1度目は夜具の中に蝮がいた。2度目は自動車のブレーキがきかないようにしていた。

●事件2
ボート事件からホテルに戻ると待ち合わせをしていた若林が到着していた。
座敷に戻ると灰皿に煙草の煙と見慣れぬ帽子が脱ぎ捨ててあったので、耕助は待っていたが、一向に戻らない為女中が探しに出ると女中の悲鳴が聞こえたので洗面所に駆け付けると、男がうつぶせに倒れていた。確認するとその男が若林だった。解剖の結果、死因は毒物だが、胃の腑からは検出されず、肺臓から発見された。要するに毒を飲んだのではなく、吸ったという。吸引ということなので、煙草の吸い殻を調べ混入されていたことがわかったが、毒物が混入されていたのは、その吸い殻1本だけだった。という事は犯人は目算でいつでもよいから、若林が死にさえすればよい。このやり方は、悠長なように見えて、犯人にとって必ずしもターゲットの人物のそばにいる必要がないので、アリバイもできる。
翌日耕助のもとに古館恭三が訪ねてきた。古館曰く、犬神家の遺言状が読まれた気配がある。遺言状を入れた金庫は若林も開けることが出来る。犬神家の人間があの金庫を開ける事は出来ないので、もしかすると若林が誰かに買収されたのではないかと心配になった。
耕助は遺言状の内容を知ることは出来なかったが、古館弁護士が珠世のボートでの事件を聞いてきたので、珠世が遺言状の大立て物だという事だけは知りえた。

●佐清
昭和2×年11月1日。佐清は南方より復員はしていたが、東京に滞在したまま、博多まで迎えに行った松子と共に中々那須市の本邸に戻らなかったが、やっとこの日那須市に戻ってくると町中の噂。犬神家への行きがけに耕助のもとに寄った古館弁護士より、佐清は母の松子と共に前日の夜遅く帰宅したが、真っ黒な頭巾をかぶっており、疲れているとそのまま部屋に籠ってしまったと教えてくれた。

●遺言状開示
古館弁護士は犬神家での発表後耕助のもとにもう一度立ち寄ると約束をし、犬神家に向かった。
しかし発表前に耕助は古館に呼ばれ犬神家へ赴くことになった。
開示前、佐清が頭巾をかぶったままなのが問題となり、松子の命により、頭巾を取り中の以前の佐清にそっくりなゴム製のマスクの顔を見せた。佐清は顔に大怪我をしているのでマスクを作っていた為戻るのが遅くなった事を皆に伝えた。そしてマスクをめくり顔の一部を見せる。
崩れた顔の衝撃で一同が何も口を挟めない状態で遺言状は発表された。

●青沼菊乃・静馬
遺言状公表後耕助は古館弁護士に「犬神佐兵衛伝」に記載されていない青沼親子の事を問いただす。元は犬神製糸工場の女工で松子より若い。菊乃の妊娠がわかると、松・竹・梅の娘3人はもし生まれる子が男の子の場合、佐兵衛は全財産を譲りそうだと恐慌をきたす。そして、菊乃を苛める。菊乃はこのままだといびり殺されそうだと思い逃げた。が後に佐兵衛が菊乃に斧、琴、菊の家宝(犬神家の相続権)を与えている事が発覚。そして男の子静馬を出産。松・竹・梅の3人は菊乃の元に行き、「自分の産んだ子は佐兵衛のタネではない」と一札
いれさせ、3種の家宝を取り上げる。

●手型
耕助は古館弁護士に誘われ佐武、佐智と共に那須神社に向かう。那須神社の大山神主より、連絡が有った。戦争に出る前、武運長久の祈りの為それぞれの手型を奉納していたのだ。佐武、佐智の二人はマスクの佐清が本物かどうか疑いを持っているので、これで本物かどうか証明できる。しかし松子は手型を押す事を頑なに拒む。
松子が拒んだ理由は、佐武がまるで罪人の様な切り出し方をした為、依怙地になり拒んだ。もしくは、松子はマスクの男が佐清でないと知っていて拒んだ。どちらかは不明

●事件3
古館弁護士より犬神家で事件が起こったので、すぐ来て欲しいと連絡が有った。到着後外庭を抜け内庭に入った耕助はまず見事な菊畑を目にした。珠世の使用人の猿蔵が菊作りの名人で、菊人形を作っている。その菊人形の顔は犬神家の人々の顔に似させている。順繰りに見ていくと笠原淡海は佐武だったが、よくみると総髪の四方髪ではなく現代人の様な左分けになっている。見ると似させているのではなく、佐武本人の生首だった。
その後犯行現場は犬神家のボートハウスの上が展望台になっており、そこに夥しい血溜まりと倒れた籐椅子がみつかった。しかし、胴体の方はそこにもなかった。
その展望台に菊花のブローチが落ちており、持ち主は珠世だったので、珠世から話を聞くことになった。
珠世曰く昨晩この展望台で佐武と会った。理由は、珠世は自分が持っている佐兵衛よりもらった懐中時計の修理をマスクの佐清に依頼したが断られた。しかし懐中時計の裏蓋に拇の指紋がくっきり入っていた。(どうも珠世はマスクの佐清に疑いを持っておりわざと指紋をとった様だ)それを佐武に伝え手型と照合できると伝え、渡す為だった。しかし、帰り際佐武に乱暴をはたらかれ、猿蔵に助けられ、逃げた。その時の佐武は口汚く罵っていた。というのが珠世の供述だった。

●佐清の手型
佐武の事件があり、松子・佐清親子が、依怙地になっている場合ではないので、みんなの前で佐清の手型を押すことになった。

●謎の復員者
手型の照合を待っている間、下那須の旅籠屋・柏屋の主人より頑なに顔を見せない復員者が宿泊し、急いで出発したが部屋を掃除した時に「復員援護、博多友愛会」と染めた血に染まった手ぬぐいがあった。と宿帳に記した山田三平と記した名前と住所を持ってきた。柏屋は少し前に見つかった血溜まりのあったボートがみつかった場所から5分もかからない程の距離。
耕助は、この血に染まった手ぬぐいは目につくようにわざと置いて行ったと判断した。
耕助と署長は松子・佐清のもとを訪ね、手拭いと住所を見せた。佐清が復員時に貰った手拭いには「復員援護 博多同胞会」と染めていた。しかし住所は松子の東京の邸の住所だという。

●手型の照合結果
藤崎鑑識員の報告は神社に奉納されている手形と先程のマスクの主の出型は同一という報告だった。
しかし、珠世は何かを言いかけたが、口をつぐんだ。
そして松子夫人も不可解な動揺が一瞬だけ面上に表した。

●珠世と佐智
珠世は猿蔵に内緒でボートに乗り湖面に出ていた。そこにモーター・ボートに乗った佐智が来た。佐智曰く「金田一と署長が重大な話があるから急いで集まってくれ」との事。急ぐのでこのモーター・ボートに乗れ。と。そして珠世は自分のボートを湖面に残し乗り移った途端、佐智に濡れたハンカチを鼻孔にあてられ、意識を失った。
佐智は、珠世の意識のないのを確認すると、屋敷には戻らず西に向かい、豊畑村の佐兵衛が建てた、今はもう荒れた一番最初の本邸、現在の空屋敷へ珠世を連れ込んだ。佐智は屋敷に泥靴跡をみつけるが、最近警察が復員者の捜索にこの屋敷に入ったことを思い出した。そして珠世の衣類をはいでいくとき、物音がした。確かめに佐智が部屋を出て探すが、わからず部屋に戻ると、珠世の体に上着が掛かっている。そしてドアが開くと戦闘帽を目深にかぶりマフラーで顔を隠した復員姿の男が立っていた。
そして猿蔵のもとに珠世の居場所と今の状態を知らせ、迎えに行くようにと不思議な電話があった。
珠世は無事助けられ屋敷で翌日覚醒した。
屋敷が騒がしくなっていた。昨晩より佐智が行方不明だと。その事について猿蔵に問いただしていた。
猿蔵曰く不思議な電話の後珠世を助けに行ったが、そこに椅子に縛られた佐智が居たが、腹が立ったので頬をはたきそのまま佐智を置いて佐智のモーター・ボートで犬神家の邸に戻った。
そして猿蔵の案内で空屋敷に佐智の捜索に出掛けた。佐智は上半身裸のまま椅子に縛り付けられ、猿轡もはめられたままの姿だった。父親の幸吉が猿轡を外したが、首に琴の糸が巻き付きこと切れていた。
耕助はひとつ疑問があった。佐智は強く椅子に縛り付けられていたが、上半身には多くの擦り傷があった。擦り傷が出来るには、綱が相当緩んでいないとつかないはずだと。

●斧・琴・菊
佐武が菊人形に生首を飾られ、佐智が首に琴の糸が巻き付けられていた事を知り、犬神家の相続権を表す斧・琴・菊を連想させたのは言うまでもなく、特に松・竹・梅の三姉妹が異常な反応を示したため、理由を聞く事となった。松・竹・梅が佐兵衛の寵愛を受けていた青沼菊乃を苛めた事、そして、菊乃が三姉妹の去り際に言い放った「・・・斧・琴・菊がお前たちの身に報いてくるのじゃ・・・」

●青沼菊乃・静馬の消息
警察は青沼菊乃の消息を調べたが、富山に逃げ、そこで静馬を手放し結婚をしたが、その後の消息はわからなかった。静馬は津田家に養子に行き、その後何度か戦地に赴いている事だけが知りえた。

●犬神佐兵衛の秘密
那須神社の大山神主から爆弾発言が投げ込まれた。那須神社に残っていた唐櫃に大弐と佐兵衛の書簡があったが、調べていると、大弐と佐兵衛の関係は2~3年で終わり、その後佐兵衛は大弐の若い妻・晴世と不倫関係にあり、晴世の産んだ子・祝子は佐兵衛の胤だった。祝子の娘・珠世は佐兵衛の実の孫だった。
佐兵衛は晴世と心中を図る程の関係だったが、佐兵衛自身が事業が成功していくに従い自分の子を産みながら自分の妻に慣れない晴世を憐れんでいた。会う事はできないが3人の側室を持った佐兵衛が3人の側室に情がうつらないように自分で恐れ、警戒していた。

●最後の犠牲者・佐清
12月13日、耕助は一連の事件を最初から見直していた。その時橘署長より連絡が有り、犬神家3人目の犠牲者が出た。湖面の裏側を見てくれという。耕助が確認すると胴から上が氷に突っ込まれ、真っ逆さまに足だけが突っ立ていた。死体を引き上げ確認すると、顔の崩れた佐清だった。次は“斧”かと思ったが、予想に反して頭部に斧のキズはなかった。解剖して死因を調べる為死体を移動するとき、珠世より死体の右手の指紋を取るように注進があった。

●斧(ヨキ)の謎
佐清の遺体には斧(ヨキ)の謎が隠されていた。“スケキヨ”が逆さまになっており“ヨキスケ”、上半身(スケ)が水没していたので“ヨキ”すなわち、ヨキ=斧 だと。

●青沼菊乃その後
午後9時過ぎに「青沼菊乃」を名乗る女性の訪問を受けた。現れたのは、松子の事の師匠宮川香琴だった。宮川香琴は病気の為面相が変わっていた。
菊乃は富山で琴の師匠の宮川松風と関係を持ったが籍は入れていなかった。が琴の弟子が宮川師匠と呼ぶのでそのまま通していた。静馬とは、静馬の出征前に会い、過去の出来事も全て話していた。しかし、復員したとの連絡は受けていないとの事だった。そして、静馬と佐清は顔がそっくりだったことも認めた。松子の琴の師匠になった理由は断れない事情があったのと、顔が変わっているので、好奇心も手伝って師匠になった。

●死体の指紋
珠世の注進により取った死体の指紋は、先日照合した指紋とは違っていた。
という事はこの死体は佐清ではない。


とここ迄にします。
ここから先は、犯人がわかる内容になっているからです。
ここ迄頑張って書いても、やはり最後の犯人は読んで知って欲しい。
まぁ、あまりに有名な話なので、原作を読んでいない人でも犯人だけは知っている人もあると思いますが、推理小説が好きな私には、犯人は書けません。



犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1972/06/12
  • メディア: 文庫







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横溝正史■犬神家の一族●1 [書]

横溝正史■犬神家の一族●1
●2021.06.06

先日wowowの番組表を見ていたら、横溝正史の金田一耕助シリーズの放映があるのをみつけた。
今迄も結構放映されているが、どうも見る気が起こらず、見ていなかったのだけれど、今回は見ようかと思っています。まぁ、見るなら予習でもしようかと思い読み返しています。
で復習の為、まとめようかと思いました。
先ずは『犬神家の一族』から

2021.06.06■横溝正史■犬神家の一族●1.jpg


2021.06.06■横溝正史■犬神家の一族●2.jpg

古いです。¥340と記載されています。もちろん古本です。発行は昭和50年の第12刷です。初版が47年、3年で12刷ってすごいと思うのですが、その時代はどうだったのかな?

<登場人物>

●犬神佐兵衛
信州財界の巨頭・犬神財閥の創始者。
乞食同様の境涯で転々と放浪。那須神社の拝殿の床下で倒れている所を神官の野々宮大弐・晴世夫婦に助けられ、育て教育も受ける。「犬神佐兵衛伝」では書かれていないが大弐と衆道の契りがあったと噂される。(佐兵衛は美形)大弐の斡旋で製糸工場に勤める。程なく独立し自分の工場を持つ(資本は大弐が出した)日清・日露戦争、第一次世界大戦後の国力回復時に生糸産業が業績を伸ばし、犬神製糸会社は業績を伸ばし日本一流の大会社に成長。大弐の死後、忘れ形見の祝子に婿養子を斡旋したが、夫婦共に子供・珠世が成人する前に死亡した為、犬神家に恩人の孫・珠世を引き取る。
生涯正妻を持たず3人の側室を持つ。それぞれに松子、竹子、梅子の子供有り。
昭和2×年2月18日死亡(享年81歳)佐兵衛の遺言状が問題となり事件が起こる。

●松子
佐兵衛の長女、佐清の母

●竹子
佐兵衛の次女。寅之助と結婚し、佐武、小夜子の子供有り。

●梅子
佐兵衛の三女。幸吉と結婚、一人息子は佐智。

●佐清
松子の一人息子。戦争に出征。ビルマより便りがあり、生存は確認されているが、復員時期は不明。美形。

●佐武
竹子・寅之助の息子。小太り、衝立のような体型。尊大な面構え

●佐智
梅子・幸吉の一人息子。華奢。落ち着きがなく、軽薄で狡猾そう。

●珠世
野々宮大弐・晴世の孫。絶世の美女。

●小夜子
竹子・寅之助の娘で佐武の妹。佐智に好意。

●野々宮大弐
那須神社の神官。若い妻晴世とは関係は持てず、佐兵衛と衆道の関係を持つ。

●野々宮晴世
大弐の妻。佐兵衛と不倫の関係を持ち、祝子を生み、大弐との子供として籍を入れ育てる。珠世の祖母

●祝子
晴世の娘で晴世の母。

●青沼菊乃
佐兵衛が50代の時に寵愛した女性。静馬の母。松子より若い?正室にと考えたようだが、3人の娘たちに苛め抜かれ、富山の親戚に身を寄せ、その後静馬を養子に出し、他の人と結婚。

●静馬
青沼菊乃・佐兵衛の息子。菊乃と富山に行き、津田家に養子、その後何度か戦争に出征。


●猿蔵
那須神社で育てられ菊作りの名人。恩人の娘・珠世のそばで珠世を守る。

●古館恭三
犬神家顧問の弁護士。

●若林豊一郎
古館弁護士事務所の所員。珠世に好意有り?金田一耕助に犬神家に関しての調査を依頼。一連の犯人により毒煙草を仕込まれ金田一との面談直前に死亡。


<古館弁護士に託された犬神佐兵衛の遺言状>

一、犬神家家宝の斧(よき)、琴、菊(犬神家の全財産、全事業の相続権)は次の条件のもと野々宮珠世に譲られる。

一、珠世は佐清、佐武、佐智の3人より配偶者を選ぶ。他に配偶者を選ぶ場合は斧、琴、菊の相続権は喪失する。

一、珠世は遺言状が公表後3カ月以内に配偶者を選ぶ。選ばれた相手は拒否した場合、犬神家の相続に関する権利を放棄する。三人ともが拒否もしくは死亡の場合は何人との結婚も自由。

一、珠世が遺言状公表以前もしくは公表後3カ月以内に死亡の場合は、犬神家の全事業を佐清が相続し、佐武、佐智は事業経営の補佐をする。しかし全財産は公平に5等分され、その5分の1ずつを佐清、佐武、佐智に与える。残りの5分の2は青沼菊乃の一子静馬に与える。分与を受ける物は分与額の20%を犬神奉公会に寄付する。

一、犬神奉公会は公表より3カ月以内に青沼静馬を捜索発見する。期間内に消息不明もしくは死亡の場合は彼の得るべき全額を犬神奉公会に寄付する。但し内地、外地での生存が確認された場合は公表より向こう3年間犬神奉公会で保管し、帰還後与える。帰還しない場合は犬神奉公会に納める。

一、珠世が斧、琴、菊の相続権を喪失、公表前か公表後3カ月以内に死亡の場合において、佐清死亡の場合犬神家の全事業は協同者の佐武、佐智に譲られ、同等の権力を持ち、犬神家の全事業を守り育てる。但し佐清の遺産分与額は青沼静馬にいく。佐武、佐智死亡の場合も同じく青沼静馬にいくものする。佐清、佐武、佐智3人とも死亡の場合は、全事業、全財産は全て青沼静馬にいくものする。

要するに最初は全事業、全財産は珠世の掌中に最後に置いては青沼静馬にいくように遺言されている。
佐清、佐武、佐智はいとこのうち一人だけ生き残り、珠世、静馬が死亡した場合においても、自分一人で全事業、全財産を掌握できることはできない。青沼静馬の分は犬神奉公会に寄付になっている。

犬神家の家系図は(文字が小さいのでクリックして拡大して下さい)

2021.06.06■横溝正史●犬神家の一族 家系図●3.jpg


今日は登場人物と犬神佐兵衛の遺言状と犬神家の家系図のみです。


犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1972/06/12
  • メディア: 文庫








6月1日より営業再開に伴い仕事に復帰しています。
平日は物販に関しては営業時間の短縮はなしです。そのかわり6月20日迄の土日は休業です。
混雑はないですが、リバウンドというか様子見、営業再開を待っていたのか、まぁまぁ忙しい状態です。
それよりも去年に比べ5月は雨が多かった為に運動不足+年齢の為か、久々の仕事は疲れました。
今月はまだ休みが多いのでその間に体力を戻さないといけません。

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遠野物語■柳田國男 遠野物語remix■京極夏彦 [書]

巣籠日記2■12●2021.05.06
遠野物語■柳田國男  
遠野物語remix■京極夏彦

やっと快晴です。
本当ならコート洗濯をしたかった。気温はOKでしたが、どうも昨日の雨の為に洗濯を干す所の周りの土が湿っていて空気がカラッと感じなかったので、今日は一重のストール洗濯に変更です。ストールはバッチリ乾き収納できました。
その後ウォーキングに出ました。歩いている途中自転車を10日程乗っていないことに気付き、雨も多かったので錆が気になり、外出は自転車に変更し、ついでに30分程乗り回してきました。
帰って来て録画を1本見ながら、グラノーラを作り(市販のは甘くて苦手なので)やっと読書にこぎつけました。


2021.05.06■遠野物語●1.jpg


柳田國男は官僚であり、民俗学者でもあった方です。詳しくは
柳田國男wiki→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E7%94%B0%E5%9C%8B%E7%94%B7

代表的なこの「遠野物語」は岩手県遠野地方に伝わる逸話や伝承などを明治43年に発表したものです。
話の内容は沢山ありすぎて紹介する量ではないです。
読み易い文章ではなかったので、昔読んだ時はきっと漢字を見て意味を読み取っていたのかな?今日は全て読めなかったけれど、読み直すと、あっ、これ憶えてるっていうのが結構あった。
で、京極夏彦のremixの方は、読み易い現代語になっており、順番も解り易いようになっています。でも、原本についている番号もちゃんとつけてくれているので、今日はremix→原本でチマチマ時間を掛けながら読んでいました。

2021.05.06■遠野物語●2.jpg


2021.05.06■遠野物語●3.jpg


原本の文庫(この文庫は本当の初版のほうではなく再販の方ですが)、これも昭和53年発行なので、またもや小さい字で詰まっているので、眼鏡を外し、裸眼でないと読み辛い。京極本の方は眼鏡をかけても読めますけど、いちいちつけたり外したりするのが面倒で両方裸眼で読んでいます。ただでさえ、ほぼ一話毎に比べながら読んでいる為2冊手に持っている。眼鏡迄は手が回りません。
これを読み終わったら、「遠野物語拾遺retold」も買って読み比べようかと思っています。

先程友達から連絡があり、百貨店は時短営業じゃないかな?って言っていました。大型施設は延長後、8時迄営業。という事らしいです。百貨店からの連絡は店長にいくので、その後私達に連絡でしょう。今回の休業前の決定も前日の18時以降だったので、今回もギリギリ?いや、シフトとかもあるし、少し前に連絡ないと大変だと思う。

明日は免許の更新に行ってきます。
今、警察署での更新も予約です。ゴールド免許は当日に講習が受けることが出来るので、後は発送してもらいます。
写真は少し前に、普段より厚塗り化粧で撮影済みです。
最近のBOXの証明写真では美肌とかできる(姉がしていた)。でも、あれ、顔が白くなるので、私には向いていない。以前化粧品のお店でいつもより白いファンデーションをすすめられ買ったことがあるのですが、やたら眉毛が目立ったので、白っぽくなる美肌効果はしませんでした。


遠野物語 (新潮文庫)

遠野物語 (新潮文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/05/06
  • メディア: 文庫




遠野物語remix

遠野物語remix

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: 文庫













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巣籠日記2■11●2021.05.05 [書]

巣籠日記2■11●2021.05.05

今日も朝から雨です。今日も冬物洗濯出来ませんでした。
結局、細々した用事の合間に残りの漫画を読み終わりました。

何を読んでいたかというと、映画化もされていた「大奥」でした。
徳川の三代将軍家光から最後の将軍慶喜迄の話ですが、将軍名はそのままですが、大半が男女が入れ替わって話が進みます。将軍はほとんどが美形に描かれているのでちょっと見分けがつけ辛かった。八代の吉宗と九代の家重だけは、顔が違っていたのでさすがに見分けはつきました。話の流れは歴史にのっとった、歴史の勉強にもなる話です。歴史好きとしては、流れがわかってしまうのですが、細かい内容を男女入れ替わりで話を作っているので面白かった。全くの作り話ではなく、現在解っている史実に基づいているのでかえって描くのが大変だったと思います。終わりもすっきりしていました。
問題は、19巻あるのですが、15巻が抜けていた。姉に「15巻買えへんの?」と聞いたらどうも持っているのは全て古本で揃えていたらしく、新刊で買う程ではなかったそうです。で、姉自身はネカフェで15巻は読んだそうです。ずるい!結局14代将軍家茂の時の和宮降嫁の所は読めなかった。16巻では婚礼の所からだった。

読み比べをする予定の本は柳田國男の「遠野物語」です。
京極夏彦が「遠野物語remix」というのを出しているのですが、持っていたが読んでいなかった。
柳田國男の方、これも読んだのが相当前なので、読み返そうと思っているのですが、自分の本棚のどこにあるかわからないというか、「日本の伝説」は少し前の本を除けたらみつかったけれど、その周辺があまりの重量で、動かし辛い所があり探しきれなかった。
で、諦めかけていたのですが「もしかしたら、この手の本なら姉が持っているかも?」と思い姉の本棚を探したらありました。
明日は午前中少し出掛ける予定があるのですが、それが終わったら読もうと思っています。




大奥 コミック 全19巻セット

大奥 コミック 全19巻セット

  • 作者: よしなが ふみ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2021/02/26
  • メディア: コミック







今日のBGMは




Steve Reich: Six Pianos/Terry Riley:Keyboard Study #1

Steve Reich: Six Pianos/Terry Riley:Keyboard Study #1

  • アーティスト: Gregor Schwellenbach,Hauschka,Brandt Brandt
  • 出版社/メーカー: FILM
  • 発売日: 2016/11/18
  • メディア: CD








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巣籠日記2■7●2021.05.01 [書]

巣籠日記2■7●2021.05.01

午前中、朝食後、新聞を読んだり、洗濯したりした後ウォーキングに出ます。昨日は出発するのが遅くなり、気温が上がり汗だくになる。という失敗をした為今日は10時頃に出ました。気温は問題ないのですが、強風がひどく、歩いて5分程で目にゴミ。コンタクトレンズをしているので、涙が止まらなくなったのに、ポケットに手を突っ込むと、タオルを忘れている。これはまずいと思い、ショートコースに変更しました。変更して正解でした。海からの風が強すぎて歩き辛いほど。いつもの海に向かうコースだと、とんでもなく体力使うところでした。で、ティッシュで涙は拭いてどうにか帰宅しましたが、コンタクトレンズを外す迄痛かった。

今日は例の本を戻すついでに、放置している本を移動と入れ替えをするつもりでした。
先日角川文庫の横溝本の表紙を紹介しているサイトを見ていた時、自分が持っているかどうか不明の本もあった。

もっと沢山載せているページをみつけた。
横溝文庫 表紙図鑑→http://kakeya.world.coocan.jp/chronicle/yokomizo.html

比べる為に私も簡単に撮影

2021.05.01■横溝正史■角川文庫シリーズ●1.jpg


2021.05.01■横溝正史■角川文庫シリーズ●2.jpg


2021.05.01■横溝正史■角川文庫シリーズ●3.jpg


2021.05.01■横溝正史■角川文庫シリーズ●4.jpg


2021.05.01■横溝正史■角川文庫シリーズ●5.jpg


今日は角川文庫だけです。
別に売るつもりはないので、綺麗に撮影はしませんでした。
私が20代の頃は、まだ古本屋でこのシリーズが出回っていたので、ある程度揃えることが出来ました。
他、春陽文庫や徳間文庫を持っていますが、今日は撮っていません。
写真3枚目迄は古本です。4枚目の「横溝正史続本」より後は古本では見つけることができなくて普通に新刊で買ったのかな?あまりに昔で買った場所まで憶えていませんでした。
で、比べると、古いのと新しいのと両方あります。古いシリーズでも2種類あったようです。
他のも読み直そうかと思ったのですが、止まらなくなり、他の事が出来なくなりそうなので、他の本を読んでいる合間にチョコチョコ読もうかな。
結局本棚整理は完全には終わらなかったので、焦らずボチボチします。



横溝正史の本を読む時はこれかな?



明星

明星

  • アーティスト: 井上陽水
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1996/09/01
  • メディア: CD







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横溝正史■病院坂の首縊りの家-3 [書]

横溝正史■病院坂の首縊りの家-3
巣籠日記 2■4●2021.04.28

今日も続きになります。下巻は手の抜けない内容が盛り沢山なので今日で書き切れるかどうかは不明です。

下巻では本條写真館改め本條会館株式会社が重要な要素となります。
で、本條家は単純ですが、家系図

2021.04.28■横溝正史■病院坂の首縊りの家 本條家●1.jpg


本條家は明治25年権之助が設立。本條家は単純ですが、ここには載っていないが、本條写真館当時、徳兵衛が戦災孤児の兵頭房太郎を育て、そのまま働いていた。房太郎はこの下巻の話の10年程前に退職し写真家に転身していた。
耕助が本條家と法眼家が長の付き合いと感じた写真、明治42年の法眼病院竣成記念の撮影は権之助、大正10年の改築時の写真は紋十郎、そして昭和の戦後の被災時の廃墟の写真は徳兵衛が撮影していた。

昭和48年4月8日、本條徳兵衛の告別式があった。
耕助はその日渋谷にある等々力元警部が定年退職後設立した「等々力秘密探偵事務所」を訪問した。そして旧交を温めた後、二人が不本意な結末で終わった昭和28年の「生首風鈴事件」の事を話した。当時現職の警察官だった等々力が話せなかった事も含め話した。
町の一写真館が地下2階地上9階の本條会館に急成長したのは、五十嵐産業より厖大な資本が入っている。28年の事件当時、徳兵衛は何かを知っている様子だったが、事件は時効が成立している。徳兵衛は弥生を恐喝しているのではないかと疑っているが、恐喝される側の弥生も一筋縄でいかない豪傑、お互いの利害になるように協力し合っているのではないか?
徳兵衛は几帳面な性格で全ての乾板・フィルム・写真を本條会館と廊下で繋がっている「温故知新館」に保存している。耕助はその保存された写真の中に弥生の世に出したくない写真があるのではないかと疑っている。徳兵衛は実直な性格だったが、戦後の何もかもなくしてしまった時代、背に腹は代えられないと思ったのではないか。

本條徳兵衛の告別式の少し前、耕助の住まいである緑が丘荘で満身創痍の直吉の訪問を受けていた。
徳兵衛は自分の寿命が尽きている事をわかった上で直吉に告白と遺言をした。
弥生を恐喝していた事、そして自分の死後〝鉄の函”(鍵の1つは弥生、もう1つの鍵は昔徳兵衛が捨てている)を由香利立会いの下渡す事。渡すと無償で弥生名義の本條会館の株の半分を受け取るという事。そして、直吉はなぜか自分の命が狙われている事を耕助に話した。しかし、襲撃者は法眼家ではないと思っている。法眼家にとってもうすぐ手に入る〝鉄の函”の代償が犯罪に及ぶものでないとわかっている。狙いの不明な襲撃が怖く、徳兵衛に相談した所、耕助が何もかも知っていて黙っている。信用できるので相談に行け。と言われ、訪問し、相談した。そしてもし犯人がわからずに直吉が殺害された場合、鉄の函をこじ開けてでも調査して欲しいと、〝鉄の函”と百万円を置いていった。

昭和48年の法眼家は、82、3になるであろう弥生と弥生の薫陶を受けた由香利、夫の滋、二人の息子鉄也、滋の母光枝、数人のお手伝い、そして、看護師の遠藤多津子。弥生はこの頃由香利と多津子以外とは会っていない。

その頃鉄也はある手紙を受けていた。封書の中には昭和28年の病院坂の首縊りの家で起きた生首風鈴事件の写真と、手紙だった。手紙の内容は、
「お前は法眼滋の子供ではない。由香利が自由奔放だった独身時代関係の持った写真の生首の男だ。お前が髭を伸ばすと相似が明らかになる。生首の主が知りたければ昭和28年の生首風鈴事件を調べろ。」

4月11日、直吉の警護をしているのは、耕助、等々力、多門修である。等々力は会館である黒板を見つけた
“「怒れる海賊たち」同窓会様”
昭和28年の事件時、佐川哲也のアリバイ証明をした多門修はその後佐川哲也と付き合いがある。多門修からきいた所、哲也の元に2週間前招待状が届いた。その招待状の差出人の名前が佐川哲也本人と、現在作曲家になっている秋山浩二。身に覚えがないので、秋山浩二に連絡を取ると、秋山も知らない。会館に問い合わせると電話で申し込みがあり、その後過分の現金書留も届いている。哲也が多門修に相談をした時には時間的に手遅れだったので、会はそのまま催すことになった。

同じ日、鉄也が自分の友人である本條徳彦の父親に聞きたいことがあり、本條会館を訪れていた。そして、由香利・滋夫妻も媒酌人を務める結婚式がある為、会館に来ていた。
兵頭房太郎も香港で徳兵衛の訃報を新聞で読み、帰国し、会館に来ていた。
等々力が9階のスイートルーム付近を巡回している時、4階の同窓会にいるはずの吉沢平吉をみかけた。等々力はスイートルームを確認した時、直吉は恐怖を紛らわす為泥酔していた。そして直吉を息子の徳彦にまかせ、先程吉沢平吉が向かった屋上の巡回に出た。屋上では何も変わりはなかったが、庇の裏からぶら下がったロープを見つけただけだった。そして4階に降りた。しかし4階に居た耕助に持ち場を離れたことを咎められ、4階は多門修にまかせ二人で再び9階のスイートルームに戻った。

4階の同窓会会場には多門修が偶然を装い、会に参加していた。そして、席の空いている吉沢平吉がもうフロントには到着している事を伝え、原田雅美、加藤謙三に謎の招待状の件を話していた。その直後吉沢平吉が会場に入ってきた。旧交を温めた後、平吉に招待状の件を問い詰めている時、同窓会の催されている弥生の間だけが、停電になった。そしてマントルピースの上に置かれていた時計の文字盤が外れ、光線がスクリーンに何かを映した。そこに映し出されたものは、昭和28年の事件の山内敏男の生首写真だった。そして「おまえたちは呪われている」とい呪詛の言葉を吐き、時計は爆発した。
そしてその直後建物の外で鋭い悲鳴のような声が聞こえたかと思うと次の瞬間何か大きなものが窓の外に落下し、グシャと物の砕ける音がし、隣のビルの屋根の上で動かなくなった。
そこに倒れ死んでいるのは、本條直吉だった。

4月13日、耕助は弥生に招かれ法眼家を訪ねた。迎え入れてくれた由香利によると、こちらから招いたのに申し訳ないが、弥生は現在も頭ははっきりしているが、寄せる年波には勝てず、肉体的に問題があり老醜の姿を人には見せたくないので、カーテン越しの面会となるとの事。面会の内容は、直吉より手紙を受け取った。〝鉄の函”を金田一耕助に預けた事の報告の手紙だった。しかし、耕助は〝鉄の函”を持参していなかった。直吉の事件が解決していなかったからだ。そして、〝鉄の函”を渡すもう一つ条件の由香利立会いが必要である事を伝えた。弥生は由香利ならここに居ると主張したが、耕助は爆弾を投下した。
この人は法眼由香利ではない、山内小雪であると。
そして耕助は以前成城の先生が見つけた短冊のメモに由香利の指紋がついていた事。そして、ロスアンゼルスの知人に送ってもらった、由香利を名乗る女性の指紋の付いたシャンパングラスを持っている事を。事件の真相を話そうとしたとき、電話のベルが鳴った。

また殺人事件が起こった。今度は吉沢平吉が勤め先である日曜大工センターで殺害され、容疑者として平吉の遺体の側に立っていた法眼鉄也が警察に連行されている事を弥生と小雪に報告し、もうしばらく、由香利としてふるまう必要があると伝えた。鉄也は完全黙秘をしていたが、佐川哲也により身元が判明した。遺体の死亡時刻がだいたいわかると、鉄也のアリバイは証明された。

耕助は小雪より鉄也に届いていた封書を預かっていた。そして、同封されていた写真が、件の同窓会で映し出された山内敏男の生首写真と同じで、本條写真館の別館「温故知新館」より持ち出されたのではないかと確信していた。そしてその写真を持ち出せる人物が限られている事も。
持ち出せる人物の一人直吉は、もし実際写真を使って恐喝をしていれば、自分を狙っている相手がわかっていたはずだった。しかしわからなかったことにより、直吉が恐喝者でないことの証明となっていた。
もう一人の本條写真館に出入り自由の人物が写真を持ち出し、恐喝を行っていたことになる。しかし、被恐喝者は狙う相手を間違った。間違って直吉を殺してしまった。そしてその殺人をも恐喝のネタにされてしまった。
耕助は多もう一人の「温故知新館」に出入り自由の兵頭房太郎の経営状況を多門修に調査させていた。かなり酷い状況だった。そして確信を持ったが、警察の組織的動きを待っていられない状況と判断し、耕助、等々力、多門修で非合法な手段を取ることにした。房太郎の写真スタジオ兼住居に忍び込み、現在作成している法眼滋への恐喝文書と写真の所在を作成途中に押さえた。
そして房太郎を囮にし、直吉殺害犯である法眼滋を呼び出した。そして滋の愚行を止めようとした由香利が滋の所持していたピストルの弾を受け落命。

滋には同情すべき点もあった。滋は由香利を本当に愛していたし、鉄也は自慢の息子だった。由香利に自分の子供を産ませることができなかったことがくやしく、逆恨みの様に、息子鉄也に侮辱の手紙を送っていた。

4月30日、耕助は再び弥生と対峙した。由香利が亡くなる直前耕助にテープを送っていた。そのテープを持参し、弥生に聞かせる為に。テープには昭和28年の事件の詳細、そして鉄也の事、滋に対しての愛情の事等が入っていた。弥生に聞かせ、そして〝鉄の函”を手渡した。



下巻はこんな所でしょうか。正直いい所は結構端折っています。私の拙い文章でまとめるには、もったいないからです。この作品、書かれた時代が結構前なので、今からでは発表できないような表現が多々あります。再発行された本は読んでいないので、そのまま掲載されたかどうかはわかりませんが、表現を変えても揺るぎない内容の話だと思います。1979年に映画化もされているようですが、できれば、原作を読み、横溝正史の世界を感じて欲しいです。

2021.04.26■横溝正史■病院坂の首縊りの家.jpg


正直これだけ書いたら、目が疲れました。最近2回読んだとはいえ、曖昧な記憶で書きたくなかったので、原作の小さい字を見ながら書きました。
明日も大阪は雨の様ですが、明日はもう少し軽い日記にすると思います。









病院坂の首縊りの家―金田一耕助最後の事件 (1978年) (角川文庫)

病院坂の首縊りの家―金田一耕助最後の事件 (1978年) (角川文庫)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2021/04/28
  • メディア: 文庫











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